ティンダロ・デ・ルカ
過去の写真を見ていて色々懐かしいものが出て来たので、ついでにご紹介を。
今はもうお亡くなりになりましたが、ミラノの巨匠ティンダロ・デ・ルカ氏との一枚。
入社した翌日、偶然にもティンダロ氏の来日の日だったようなのですが、通訳担当の方が大阪に来られなくなったとの事。
そこで急遽通訳を頼まれ、一緒に市内の串カツ屋さんへ行った時の写真です。
いきなり大役を任されて、あの時はちょっと面食らいました。
通訳と言っても、私もたった3ヶ月しか行ってないのでイタリア語は未熟ですし、更に4年間のブランクがあり。。
もう開き直るしかないという気持ちで、身振り手振りも交えながら一生懸命コミュニケーションを取ったのを憶えています。
ティンダロ氏は食べるのが大好きな方だったようで、ご高齢にも関わらずとても沢山の量を食べる方でした。
イタリアの方は食べ物については余り冒険されないのですが、この串カツに関しては抵抗なく気に入ってもらえる料理かと思います。
また好奇心も旺盛な方だったようで、お店に置いてあった岩塩を珍しそうに写真に収めていらっしゃいました。
今思えばいきなりとんでもない経験をさせて頂いたものだなと思います。
今はもうお会いする事が出来なくなった事で、こうした思い出が本当に貴重なものに変わって行くのを感じます。
ストラスブルゴ
スマホの機能に「○年前の今日」として、写真が出て来る機能がありますが、今日は何とも懐かしい写真が上がって来ました。
ストラスブルゴに初めて出社した時の写真です。(ストラスブルゴ大阪店です。)
もう6年も前の事になるようですね。
それまで、サルト・ドメニカというタイトルでブログを書きつつ、二足のワラジで服を作っていたのですが、この日から服作りがいわゆる副業から本業に変わったのでした。
こちらはお店の上にある事務所で専務が来られるのを待っている間に撮った写真。
この時の、何とも言えない期待と不安の入り混じった気持ちが、昨日の事のように蘇って来ました。
ブログを通じてご注文を下さったお客様、応援して下さった方もいらっしゃった中、自分の選択は果たして正しかったのか、様々な気持ちが交錯していたのを思い出します。。
正直、ガッカリされた方も沢山いらっしゃったと思います。当時のお客様はほとんど離れて行かれましたし、多くの方から、なぜ独立しないのか?何故わざわざ雇われになるのか?と言った声も頂きました。
そういった声が上がる事も勿論承知はしておりましたが、私としては様々な点から長い目で見て、ストラスブルゴでの経験が自分に必要だと考えて出した結論でした。
今6年経って振り返ってみて、やはりあの時の選択は間違ってはいなかったと思います。
ストラスブルゴの在籍期間は3年程でしたが、その間本当に色々な経験をさせて頂きました。
今振り返ってみて、もしもあの時、井戸の中の蛙のまま勢いで独立していたらと思うと恐怖しかありません。。
毎月綱渡りのような状態ではありますが、私ごときがこうしてお店を構えて何とかやっていけているのもストラスブルゴで育てて頂いたお陰だと、改めて感謝する次第です。
新看板
緊急事態宣言もやっと解除になりました。
もしかすると半年、一年と続くのではと恐れておりましたが、思ったよりも早く解除になったと思います。日本人一人一人の努力の賜物ですね。
まだまだ第二波に対して油断は出来ませんが、取り敢えず一安心致しました。
お客様のアポイントも徐々に戻って来ており、ありがたい限りです。
心機一転再スタートという訳ではありませんが、先日お店の看板をリニューアルしました。
以前から変えたいと思っていたのですがズルズルと後回しになっており、、。
この自粛期間中にやっと着手した次第です。
また新しい気持ちでこれからお越し下さるお客様をお迎えして行きたいと思います。
グレンチェック ダブルブレステッド
グレンチェック・ダブルブレストジャケット完成です。
使用生地はマーリン&エバンスのウール・シルク・リネンになります。
昨日、大阪もやっと緊急事態宣言解除になりました。
まだまだ安心は出来ませんが、少しずつ元の生活が戻ってくる事を心から願います。
これから暑い季節になりますが、このジャケットをご着用頂いて、少しでも明るい気持ちで過ごして頂ければ幸いです。
極小
衿穴をかがっております。
このジャケットに関してはお客様のご要望で極小の衿穴にしております。
衿穴の大きさも各テーラーによって微妙に個性が現れますね。
一般的には1.5cmが平均かと思います。
中には1.0cmと小さめに作る所もあれば、1.8cm位の少し大きめの所もあります。
また、ハトメ穴(鍵穴のような形)の所もあれば、ネムリ穴(直線の切り込み)もあったり、またはモットイ穴という作り方自体が少し違うものもあります。
この辺にも作り手の美意識が現れるので面白いところです。
こちらのお客様に関してはご着用時に必ずバッジを付けられるとの事で、それが動かないように、またバッジからボールが覗かないようにとのご希望でこの仕様となっております。
これ程小さいものは中々ないと思いますが、これはこれで面白いデザインです。
何十年か後にはこれも一つのスタンダードになっているかもしれません。
時代が変わっても
袖縫い。
手縫い針で一針一針縫い上げていきます。
締めるべき所、緩めるべき所を考えながら縫いのテンションを微妙に変えて縫っていきます。
表地と芯地を最後にドッキングさせる「中綴じ」も同様です。
そう言えば、私も独立してから工場製MTMを取り扱うようになり、自分でもMTMのジャケットを着るようになりました。
正直、肩や衿の縫製に関してはマシンメイドでもハンドメイドでも、そこまで明確な違いはないかと思います。
しかし、この袖付け周りの仕事に関しては、マシンメイドとハンドメイドでは明確な着心地の違いがあるかなと思います。
(※ 決してマシンメイドが着心地が悪いという訳ではありません。)
機械も進化して、何でも効率よく作れる時代になっても、こうした手間の掛かる手仕事が未だに残っているのには、やはり理由があるのだと思います。
袖しつけ
服作りの大詰め、袖付け。
まずしつけで袖をぐるりと縫い付けて行きます。
縫い付けた後は必ず袖の落ち着きを確認します。
袖が捻れずに綺麗に真っ直ぐ落ちているか。
袖の前側は自然に膨らんでいるか。
イセは均等に入っているか。
チェック柄の場合は横の縞が合っているかも重要なチェックポイントです。
とにかく袖付けはジャケット作りの中で1番神経を使うところです。
薄手の難しい生地だと、しつけだけで1時間位費やしてしまう事もあります(汗)
以前に比べれば苦戦する事は大分少なくなりましたが、それでもお客様によってアームホールや袖山の形状は変わって来るのと、生地によってもクセがあります。
袖付けは毎回試行錯誤です。